このソングは、2022年12月29日、シーカヤックによるクジラ調査の際に、
水中マイクで録音したものです。
調査の前半では、とても小さな唄声でたまにしか聴こえませんでした。
ザトウクジラの唄声は、100km先まで届くと言われているので、
かなり遠くにいるクジラの声だと考えられました。
正午、調査を切り上げようとした頃、
7分間だけ奇跡的にクリアな唄声を聴くことができました。
興味深い事に、前回のシーズンに録音したものとは、
何かが変化している感じでした。
まだ解析中なため、結果が分かり次第お知らせします。
この7分間には、4フレーズが含まれていました。
ソングの最後の方でボートの音が現れ、唄声が聴こえにくくなったため、
一度レコーダーを止めました。
再度録音しようと試みたのですが、唄声は止んでいました。
皆さんも、この7分間のソングを注意深く聴いてみて下さい。
ボートの音は、100m以上先にいてもこれくらいの大きさで聞こえてきます。
彼らにとっては、水中におけるボートの音が、
とてもストレスを与えている事が理解できると思います。
仮に、彼らがホエール・ウォッチングやスイミングで利用される
多くのボートに囲まれたとします。
これらの騒音は、ストレスを与えるだけにとどまらず、
ソングによるコミュニケーションの妨げにもなります。
ある国では、ホエール・ウォッチングの影響により、
個体数の減少が報告された例もあります。
その他にも、ボートによる影響に関する論文が、
多数報告されています。
これらの事から、YWCでは岸からのクジラ観察をお勧めしています。
私達は、彼らについて知る事により、多くの事を学んでいます。
地球にとって、海がどれだけ大切なのかを・・・
海に生きる生命が、どれだけ重要な役割を果たしているのかを・・・
本来の自然界は、日に日に豊かになり、
年を追うごとに生命力に満ち溢れていくはず。
7年間の観察結果から、騒音における海への影響をもっと深刻に受け止め、
どうすれば良いのかを考えなければならないと思いました。
彼らが永続的に屋久島を訪れ、ソングを唄い続けられますように・・・
いつまでも、どこの海でも、彼らの唄声が響き渡り、
地球を平穏な波動で包み込みますように・・・
ヤクシマ・クジラ&イルカ研究所スタッフ一同